ギャリコの『スノーグース』

なんか下書き書いてたのにどっかに行ったのでもう一回書きます。ちなネタバレ注意

 

『"文学少女"と死にたがりの道化”』より

「ギャリコの物語は冬の香りがするわ。清らかに降り積もった新雪を、舌の上でそっと溶かし、その冷たさと儚さに心が気高く澄んでゆくような、そんな美しさと切なさがあるわ」

遠子先輩が初めて名前を出したのがこのギャリコで、その直後に『スノーグース』、『ジェニィ』、『雪乃ひとひら』を紹介していました。

…というわけでブックオフで買ってきました。『スノーグース』と『ジェニィ』を。

『雪乃ひとひら』は見当たらなかったので。何時か買った時に付けたしときます。

 まず『スノーグース』から読みました。遠子先輩が一番お薦めしていたから…と言う訳ではなく 単にページが少なかったので、読みやすかったからです。

 

 さてこの『スノーグース』 主な登場人物は二人

他の人が全く来ない、灯台に住みそこに来る鳥を愛する、でも人間が嫌いというわけでもない異形の大男ラヤダーと、その灯台に傷ついたスノーグースを連れてきた少女フリスです。

お話を読んで、私は「とても自然だな」と感じました。まるで本当にあった話かのように思わせる口調で話は書かれています。フリスの行動原理も自然だし、ラヤダーのもやもやとした感情と、やらざるを得ない選択。そしてそれに伴う最終的な結果。

後、フリスは作品中で少女から立派な女性へと成長しますが、短い文章で違和感無くその成長を描いているのが凄いな、と思いました。むしろこれ以上の追加文章は蛇足になるだろうな、ぐらいのすっぽりハマり様。読書したことが無い人間が読んだからこその感想なのかもしれませんが、こういう題材を書くのならばこういう流れでこういう完結のさせ方がベストだろう。と言い切れる作品ですね。

 

遠子さん曰く

「沼地の近くの灯台に住む孤独な画家ラヤダーと、傷ついた白雁を抱いて現れた少女フリスの静かで切ない魂のふれあい! お互いを深く優しく想いあいながら、決して言葉にはしない―――! ああ、なんて清らかな恋!」
「いい?心葉くん。ぺらぺらしゃべっちゃダメなのよ? 本当に大切な想いは、墓場まで抱いてかなきゃあ。口を閉ざし耐えるところに、切なさと美しさがただようのよ。」

 確かに、間違いなくあの時点で両想いなんですよね。ラヤダーからは分からなくとも、フリスは好意を向けられていることも、自分がラヤダーの事を好きだということも自覚していたハズ。 分かれの後に小さな灯台小屋で、自分が描かれた絵を見つけたときの気持ちは、どうだったんでしょうね。

後、スノーグースから出来た繋がりが、スノーグースが去ることで表している…と考えると、ラヤダーがその雁を一度きりしか描いていないのは、ラヤダー自身スノーグースを彼女とのつながりと認識して、一匹で描くのを恐怖していたんだろうな… と考えれます。まぁ想像ですが

 

最終的な結論ですがコンプレックス持ちの男と無垢な少女の組み合わせは鉄板だと思いました

ではでは

 

引用

文学少女と死にたがりの道化』著野村美月 ファミ通文庫

『スノーグース』ポールギャリコ著 矢川澄子訳 新潮文庫